家を買うかどうかを考えるとき、多くの人が最初に見るのは毎月の支払いです。今の家賃が10万円なら、住宅ローンの返済額も10万円前後にすれば無理がないように感じるかもしれません。しかし、貯金が増える人ほど、目先の月額だけでは判断しません。

住宅購入では、頭金、諸費用、住宅ローン、固定資産税、保険料、修繕費、家具家電、将来の住み替え可能性まで含めて考える必要があります。今の家賃より安く見える返済額でも、購入後の支出を見落とすと、貯金が増えにくい家計になることがあります。大切なのは、買えるかどうかではなく、買った後も家計を守れるかどうかです。

今の負担だけで判断すると見落としやすいこと

住宅購入を検討するとき、毎月の家賃と住宅ローン返済額を比べるのは自然なことです。ただし、この比較だけでは、実際の負担を正しく把握できません。賃貸では家賃や更新料が中心ですが、持ち家では別の支出が発生します。

住宅ローン以外の支出がある

持ち家になると、住宅ローンの返済に加えて、固定資産税、火災保険料、地震保険料、修繕費、設備交換費などが必要になります。戸建ての場合、屋根、外壁、給湯器、水回り、外構などの修繕も自分で計画しなければなりません。

たとえば、毎月の住宅ローン返済額が今の家賃と同じでも、年間で固定資産税や保険料、将来の修繕積立分を考えると、実際の住居費は家賃時代より重くなることがあります。貯金が増える人は、月々の返済額ではなく、年間支出と長期支出で判断します。

購入時の諸費用を軽く見ない

住宅購入では、物件価格や建物価格だけでなく、さまざまな諸費用がかかります。登記費用、住宅ローン関連費用、火災保険料、印紙税、仲介手数料、引っ越し費用などが発生する場合があります。

注文住宅では、さらに土地の購入費、建物本体価格、付帯工事費、外構費、地盤改良費、照明、カーテン、エアコン、家具家電などを分けて考える必要があります。見積もりの中に何が含まれていて、何が別料金なのかを確認しないと、後から予算が膨らみやすくなります。

住宅ローンは借りられる額ではなく返せる額で見る

住宅ローンを組むときは、金融機関の審査に通るかどうかが気になります。しかし、審査に通る金額と、家計に無理がない金額は同じではありません。

フラット35では、すべての借入れに関して、年収に占める年間合計返済額の割合である総返済負担率について、年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下という基準が示されています。これは重要な目安ですが、その範囲内なら家計が安心という意味ではありません。

返済負担率だけでは生活費の差が見えない

同じ年収でも、家計の中身は家庭ごとに違います。子どもの教育費がかかる家庭、車を持っている家庭、親への仕送りがある家庭、医療費や介護費を見込む家庭では、住宅ローンに回せる金額は変わります。

貯金が増える人は、年収だけで住宅ローンを考えません。食費、通信費、保険料、教育費、車関連費、老後資金の積み立て、急な出費への備えを引いたうえで、毎月いくらなら無理なく返せるかを見ます。

ボーナス返済に頼りすぎない

住宅ローンでは、毎月返済に加えてボーナス返済を組み込むこともできます。しかし、ボーナスは勤務先の業績や働き方によって変動する可能性があります。将来も今と同じ金額が出る前提で返済計画を立てると、収入が減ったときに家計が苦しくなります。

ボーナスは、繰り上げ返済、修繕費、教育費、旅行、家電の買い替えなど、家計の余力として残しておく考え方もあります。毎月の収入だけで返済できる範囲に抑えると、購入後の不安を減らしやすくなります。

貯金が増える人が見る購入費用の内訳

住宅購入で失敗しにくい人は、物件価格だけで判断しません。購入前、購入時、購入後に分けて、必要なお金を整理します。

確認する費用主な内容
購入前の費用土地探し、資料請求、相談、現地確認、交通費など
購入時の費用頭金、諸費用、登記費用、ローン関連費用、保険料など
注文住宅の追加費用付帯工事、外構、地盤改良、照明、カーテン、空調など
購入後の費用固定資産税、保険料、修繕費、設備交換費、維持管理費など
将来の費用教育費、老後資金、車の買い替え、親の介護、自宅修繕など

頭金を入れすぎない判断も必要

頭金を多く入れると、借入額を減らせるため、毎月の返済負担を抑えやすくなります。一方で、手元資金を減らしすぎると、購入後の急な支出に対応しにくくなります。

貯金がある人ほど、頭金をどこまで入れるかで悩みやすくなります。大切なのは、頭金を入れた後も生活防衛資金を残せるかどうかです。病気、収入減、修繕、教育費、家電の故障などに備えるお金まで使い切らないようにしましょう。

注文住宅では予算の優先順位が重要

注文住宅は、間取り、収納、家事動線、断熱性能、耐震性能、設備、デザインなどを希望に合わせやすい点が魅力です。しかし、自由度が高い分、希望を足していくほど費用も増えやすくなります。

最初に上限予算を決める

注文住宅で大切なのは、最初に上限予算を決めることです。住宅会社から提案を受ける前に、月々の返済額、諸費用、手元資金、将来の維持費を含めて、家計として許容できる範囲を整理しておきましょう。

予算の上限があいまいなまま打ち合わせを進めると、設備や仕様を少しずつ上げた結果、総額が大きく膨らむことがあります。こだわる部分と抑える部分を分けることで、満足度と家計のバランスを取りやすくなります。

標準仕様と別料金を確認する

住宅会社を比較するときは、坪単価だけで判断しないことが大切です。同じ坪単価に見えても、含まれる仕様や工事範囲が違うことがあります。

キッチン、浴室、トイレ、断熱材、窓、外壁、屋根、照明、カーテン、エアコン、外構、地盤改良など、どこまでが標準で、どこからが追加費用なのかを確認しましょう。資料請求や見積もり比較では、この違いを把握することが重要です。

購入後も貯金が続く家計にする

家を買う目的は、住宅ローンを組むことではなく、安心して暮らせる住まいを持つことです。そのためには、購入後も貯金が続く家計にしておく必要があります。

毎月の返済で家計がぎりぎりになると、修繕費や教育費、老後資金の準備が後回しになります。住まいの満足度が高くても、家計に余裕がなければ、暮らし全体の安心感は下がってしまいます。

購入前に家計シミュレーションをする

購入前には、現在の家賃、住宅ローン返済額、固定資産税、保険料、修繕積立分、光熱費の変化、通勤費、車の必要性などを並べて、購入後の家計を試算しましょう。

さらに、子どもの進学、車の買い替え、親の介護、退職後の収入減なども考えておくと、無理のない購入額を見極めやすくなります。貯金が増える人は、今払えるかではなく、10年後も困らないかを基準に考えます。

住宅購入は総額と暮らし方で判断する

住宅購入では、今の家賃や毎月の返済額だけを見て判断すると、購入後の負担を見誤ることがあります。貯金が増える人は、住宅ローン、諸費用、固定資産税、保険料、修繕費、将来のライフイベントまで含めて考えます。

注文住宅を検討する場合も、理想を詰め込む前に、家計として無理のない上限を決めることが大切です。標準仕様と追加費用を確認し、複数の住宅会社を比較することで、総額の違いが見えやすくなります。

家は長く暮らす場所であり、大きなお金を使う買い物です。今の負担が軽く見えるかどうかだけでなく、購入後も貯金を続けられるか、将来の支出に対応できるか、自分たちの暮らしに合っているかを確認したうえで判断しましょう。

出典:住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」

出典:国土交通省「住まいにはどんな費用がかかる?」

出典:国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査の結果」